ハンス/甲田の調査報告書

ハンス/甲田の調査報告書 file.1 時代背景と入隊基準

第26回公演『わが家の最終的解決』の公式ホームページが本日公開されました。この度はご覧いただきまして誠にありがとうございます。
公演日時は2019年1月25日(金)〜1月29日(火)と今からおよそ3ヶ月近くございます。
先立ちましてこちらのページではそれまでの間に少しばかりの文章を綴っていきたいと考えております。

自己紹介が遅れました。私は甲田守と申します。『わが家の最終的解決』ではハンスを演じます。
‎さてこちらでは何を綴っていくかと申しますと大きく捉えまして『わが家の最終的解決』の舞台となるその時代や場所、起こった出来事など関連することについて書き連ねていきたいと考えております。学校で教わる科目で言うとおおよそ「歴史」に相当するところでしょうか。
と大上段に構えましたが私は専門家ではありませんし現在も勉強途中でございます。皆さんとともに知識を深めていき観劇の一助にもなればこれ幸いです。

『わが家の最終的解決』の時代背景

‎『わが家の最終的解決』の舞台となる国はオランダ、時代は第二次世界大戦の最中です。
‎「オランダのどこ?」「第二次世界大戦の最中って具体的に何年何月何日だろう?」といきなりではございますが続けざまに私の頭の中に疑問が浮かんで参りました。知らないことが次から次へと出てきて私の無知が露呈されます。
‎このような詳細な情報については劇中で語られるかもしれませんし語られないかもしれません。とりあえずは大きな時代背景から捉えていくことに致しましょう。

‎歴史を勉強する上でやはり欠かせないのが書物です。過去の蓄積からは多くのことを学ぶことができます。歴史を学ぶ際には文献から、そしてまたはオーラルヒストリーという言葉があるようです。実際に人に会って話を聞いて歴史を知るという手法です。

‎今回の舞台はホロコーストを扱うわけですからユダヤ人について知らなければならないのは当然です。では知るにはどうすればいいのか?書物だけでは物足りないと考えた私はユダヤ人に直接会って話を聞いてみることにしました。やはり専門家ではない私は会ってみるの方法もあまり適切ではなく相手に不快な思いを抱かせてしまった感は否めません。ですが引き続き交渉の機会を定めてこちらの方にもその経過を報告していけたらと考えております。

‎以上のように本と人への接触を通じてこの『わが家の最終的解決』という作品にアプローチしていきたいと私は考えております。

‎と、ここまで書いてきて気づいたのですが、歴史を学ぶ際の道具の一つを「書籍」としたのは些か視点が欠けておりました。訂正して「史料」と致します。と申しますのも私がホロコーストを知るきっかけとなった「映画」という映像資料がすっぽりと抜け落ちていたからであります。話は少し逸れますが私がホロコーストを知るきっかけとなったのは『シンドラーのリスト』という映画でした。小学生の時分に観てとても強い衝撃を受けたのを覚えております。その後私は広く「戦争」へと関心が寄せられ社会の授業では熱心に勉強するようになりました。

‎ホロコーストに関する映画は『シンドラーのリスト』に限らず今までに数多く上映されております。私は見るのが巧みな人間ではありませんが面白き映画をここで紹介できればと思います。

‎本を読み映画を観て人に会う。以上のようなことをやっていきたいと思うのですが、これらの目的は上に述べましたようにお客様の観劇の一助のため、でもあるのですが、やはり自分の役のためといえます。

役作り「ナチスSSの入隊基準」

‎役に向き合ったり近づいたりとこのようなことを役づくりというのでしょうか。しかし自分は向き合い方も近づき方もそれがどうしたらできるのか正直なところよくわかっておりません。それも含めて今回は考えていきたいと思います。

‎加えまして、これも役づくりの一環でしょうか、知識とともに身体の方では強靭な肉体を作り上げたいと思っております。
劇中の時代ではゲシュタポに入隊するには強い身体と血統が求められたそうであります。現在の私の身体は180㎝、58.5kgと決して強靭な肉体とは言える状態ではありません。
しかし、役に近づくや役づくりのためには挑戦しなければなりません。

‎実際にゲシュタポを含むSSの入隊基準はどんなものだったのでしょう。
芝健介の『武装SS ナチスもう一つの暴力装置』によりますと「身長が最低限一メートル七○センチ、年齢の上限が三十歳、そして身体適格を明示した医療証明が必要とされた」とあります。特務部隊になるとさらに厳しく身長最低一メートル七十四センチ、年齢も上限が二十三歳となります。
SSに求められたのは「能力ある、大柄の、人種的にすぐれた、しかもできるかぎり完全な若い力」でありました。採用の特徴としては、人種、肉体にこだわる一方、知的能力に関しては基準が与えられていなかったようです。体格検査についてもう少し踏み込みますと、ハインツ・ヘーネ『髑髏の結社 SSの歴史』によりますと入隊試験の体格検査では身体の均整がチェックされ九段階のうち上位の四段階〈理想的、秀、優、良〉に相当すれば合格できたようです。
また第五、第六段階の体格で不適格であっても、真の北方民族であることを態度で証明することが許されました。
おそらくは敗者復活戦のようなもので体格で落とされても人種面で挽回できたということでしょう。
しかし証明の仕方が「態度」とはどういうことなのでしょう。人種を態度で証明することができたのでしょうか。

‎体格検査における「身体の均整」については具体的にはわかりかねる部分もありますが「背が高くても体形の悪い者」は嫌悪されたそうです。
私に当てはめますと身長では基準をクリアしておりますが果たして合格することができたかどうか。
第五、六段階に残って「態度」で挽回をアピール、もしくはそれにも入らず第七〜九段階に分けられて落とされていたかもしれません。
一見しても貧弱には見えない「能力ある、大柄の、人種的にすぐれた、しかもできるかぎり完全な若い力」を目指していきたいと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

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